HV投入 電動化で燃費2割向上
他社は開発縮小・撤退
 マツダは同社初となるディーゼルエンジンをベースとしたハイブリッド車(HV)を投入する方針を固めた。
2020年をメドに欧州と日本で発売し、米国などにも投入を検討する。
独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正や環境税制強化でディーゼル車には逆風が吹く。
日本勢でも開発縮小や撤退の動きが広がるなか、ディーゼルに懸けるマツダの勝算はどこにあるのか。

 まず主力SUV(多目的スポーツ車)「CX-5」のディーゼルHVを投入し、SUVを中心に車種を順次増やす。
マツダは18年度中にガソリンエンジンのHVを投入する計画だったが、対象をディーゼルエンジンにも広げる。
いずれも資本業務提携するトヨタ自動車から技術供与は受けず、独自に開発する方針だ。

 マツダが採用するのは構造が単純でコストを抑えられる「マイルドハイブリッド」と呼ばれる簡易型システム。
48㌾の高出力の電池と小型モーターで発進時などにエンジンを補助する。
燃焼効率を1割高めた新型ディーゼルエンジンと組み合わせることで、すでに世界最高水準とされる同社の現行ディーゼル車よりも燃費性能をさらに2割程度引き上げる。

 世界はディーゼル車への逆風が吹く。
本場欧州では特に顕著だ。
ピークの11年には西欧18ヶ国での販売台数の56%を占めたディーゼル車は、18年4~6月では37%まで減少。
5月にはドイツ第2の都市ハンブルグが一部の道路で旧型ディーゼル車の乗り入れ禁止を始めるなど、自治体の規制も強まっている。

 「欧州のディーゼル車比率が18%に減少した」
マツダの藤本哲也常務執行役員は8月の決算説明会見で欧州で苦戦する状況を明かした。
VWの不正前には30%以上あったディーゼル比率が半減し、欧州での商品戦略見直しを迫られていた。

 既にトヨタが欧州でディーゼル乗用車から撤退する方針を決めたほか、日産自動車もディーゼルエンジンの開発を中止する見通し、マツダがディーゼルエンジンの開発を続けるのは、走りの力強さや燃料となる軽油のやすさなどを背景に当面は需要が残り、存在感を発揮できると考えているためだ。


技術を絞る戦略
 
ITSマークイットは30年のディーゼル車の世界需要は17年比で約4割減の1067万台と予測する。
一方で欧州メーカーが注力しマツダも開発するマイルドハイブリッド車は約50倍の3500万台に急拡大しEVの900万台を大きく上回る。
各国で燃費や二酸化炭素(CO2)の排出規制が厳しくなるが、高効率エンジンにEV本格普及までの「現実解」とされるマイルドハイブリッドの技術を組み合わせれば環境性能と動力性能を両立できるとみる。
 自動車産業は「CASE(つながる車、自動運転、シェアリング、電動化)」など次世代技術の領域が一気に拡大し、IT(情報技術)起業との異業種間競争も激しくなる一方だ。
世界需要の鈍化で新興国の重要性も増し販売戦線も拡大している。
 米ゼネラル・モーターズ(GM)ですら不採算の欧州やインドからの撤退するなど経営資源の再配分を急ぐなか、トヨタや日産・ルノー連合、VWなど「1000万台クラブ」以外のプレーヤーは事業の選択と集中を進めなければ生き残れなくなっている。
年間世界販売が160万台規模で世界で見れば中堅以下ともいえるマツダにとってはなおさらだ。

 ただ選択と集中にもさまざまなやり方がある。
19年から販売する全車両をEVなど電動車にするスウェーデンのボルボ・カーズのように、技術領域を思い切って絞るケースも増えている。
一方、日本車ではスズキが世界最大の市場である中国での生産から撤退することを決めた。
 インドという圧倒的に強い市場があるスズキに対し、北米や中国、欧州、日本、アジアとバランスよく台数を稼がなくてはならないマツダは、地域よりも技術を絞る戦略を明確にする。

提携で役割分担

 世界の潮流に逆行するかに見えるマツダの動きはリスクを抑えるための「保険」があってこそ。
それが17年からのトヨタとの提携関係だ。
電池やモーターなどの開発投資が膨らむEVではトヨタの力を借りながら、自らは内燃機関に注力する。
役割分担を明確にし、トヨタが全方位で進める提携関係の中で埋没しないための戦略でもある。
 もちろんVWのディーゼル不正でパワートレインの潮流が一変したことが示すように、マツダが描くシナリオ通りに市場が動く保証はどこにもなく、一歩間違えば厳しい選択を迫られる可能性もある。
一方で世界で見れば「中小メーカー」ともいえるマツダにとり激変期を生き残るための確実な進路も存在しない。
 あくまでディーゼルで勝負しようというマツダの賭けは、かつては米フォード・モーターの傘下に入るなど自動車産業の荒波にもまれてきたマツダが単独で生き残るための覚悟の能われとも言える。


引用元:日本経済新聞